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    Title

    カナレットとヴェネツィアの輝き

    Date

    2025.2.15(土) 〜 4.13(日)

    会場: 4・3階展示室

    ヴェネツィアを訪れたイギリスの貴族たちが旅の記念にと争うように買い求めたのが、18世紀を生きた画家・カナレット(1697-1768)のヴェドゥータ(景観画)です。輝く水面に整然とした建築物、祝祭的な雰囲気など、ヴェネツィアに対する理想的なイメージは、雄大さと緻密さを併せ持つカナレットのヴェドゥータを通して定着していきました。
    本展は、ヴェドゥータの巨匠・カナレットの全貌を紹介する、日本初の展覧会です。カナレットが描く壮麗なヴェネツィアの景観を通して、ヴェドゥータというジャンルの成立過程をたどるとともに、カナレットとは異なる眼差しでヴェネツィアを捉えた19世紀の画家たちの作品もあわせてご紹介します。

    基本情報

    会期
    2025年2月15日(土)〜4月13日(日)
    開室時間
    10:00〜18:00(金曜日は19:30まで)※入場は閉室30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし2月24日は開館)、2月25日(火)
    会場
    4階・3階展示室
    主催
    京都府、京都文化博物館、毎日新聞社、MBSテレビ、スコットランド国立美術館
    後援
    駐日イタリア大使館、ブリティッシュ・カウンシル、(公社)京都府観光連盟、(公社)京都市観光協会、KBS京都、エフエム京都
    協賛
    DNP大日本印刷、大和ハウス工業
    特別協力
    イタリア文化会館-大阪
    協力
    日本航空、日本貨物航空、箱根ガラスの森美術館、ITAエアウェイズ
    入場料(税込)
    一般1,800(1,600)円、大高生1,200(1,000)円、中小生600(400)円

    ※( )内は前売および20名以上の団体料金。
    ※未就学児は無料(ただし、要保護者同伴)。
    ※学生料金で入場の際には学生証をご提示ください。
    ※障がい者手帳などをご提示の方と付き添い1名までは無料。
    ※上記料金で2階総合展示(2月15日~3月19日は休室)と3階フィルムシアターもご覧いただけます。ただし、催事により別途料金が必要な場合があります。
    ※前売券は2024年12月14日(土)〜2025年2月14日(金)までの期間限定販売(会期中は当日券のみ)。
    春休み🌸こども無料ウィーク

    3月22日(土)~30日(日)
    上記期間中、小中高生の方は本展を無料でご覧いただけます。
    *入場時に学生証をご提示ください。



    主なチケット販売所

    京都文化博物館、 公式オンラインチケット(博物館公式サイト)、 ローソンチケット(Lコード:56264)、 チケットぴあ(Pコード:687-116)、 イープラス、 セブンチケット(セブンコード:108-258)、 CNプレイガイド、 アソビュー!、 楽天チケット、近鉄駅営業所ほか


    ■お得な先行ペア割チケット

    3,000円(税込/一般のみ) ※1枚ずつでも使用可

    販売場所
    公式オンラインチケット(博物館公式サイト)、 ローソンチケット、 イープラス、 セブンチケット
    販売期間
    2024年12月14日(土)~2025年2月14日(金)

    展覧会のみどころ

    みどころ

    1.日本初!ヴェドゥータ(景観画)の巨匠、カナレットの大規模展

    都市や名所を精密に描いた景観画「ヴェドゥータ」(*1)が大きく発展したのは、18世紀のことです。中でもカナレットの描くヴェドゥータは、ヴェネツィアを訪れた旅行者から熱烈に愛好されました。
    本展はヴェドゥータの巨匠として知られるカナレットの画業を紹介するとともに、ヴェドゥータの歴史的展開をまとめてご紹介する日本初の展覧会です。


    2.カナレットが記録したヴェネツィアの輝き

    カナレットが生きた18世紀、グランド・ツアー(*2)と呼ばれる貴族の周遊旅行が最盛期を迎えました。その目的地の一つであるヴェネツィアを訪れた旅行者が、旅の記念にと争うように求めたのが、カナレットの絵画だったのです。
    大運河の水辺からたちあがる壮麗な建築や輝く水面、祝祭の景色など、旅行者の求める理想的なヴェネツィアを描き、人気を博しました。


    3.モネ、ホイッスラーも愛した水の都ヴェネツィア

    カナレットが緻密に、かつ意図的な操作を重ねながら描き出したヴェネツィアの景観は、カナレット以後も、多くの画家たちを魅了し続けます。
    ホイッスラーにブーダン、シニャック、そしてモネに至るまで、外国から訪れた画家たちもまた、聖俗が同居する魅力的な都市ヴェネツィアの姿をカンヴァスに表現しました。




    (*1)ヴェドゥータ(景観画)とは
    都市の景観や古代の遺跡などを精密な透視図法に基づいて描き出した、風景画の中の一ジャンルです。画家による理想化が許容された風景画とは異なり、土地の景観を、可能な限り正確に再現することが求められました。グランド・ツアーの旅行客の間で人気を博し、18世紀のヴェネツィアやローマで発展します。


    (*2)グランド・ツアーとは
    支配階級や貴族の子弟たちが学業の終了時に行った長期間に渡る周遊旅行で、17世紀末から始まり18世紀後半の英国で最盛期を迎えました。目的地の多くはイタリアで、ローマとヴェネツィア、フィレンツェが人気でした。




    カナレット(Canaletto, 1697–1768)

    1697年、劇場の舞台デザイナー兼舞台背景画家を父に、ヴェネツィアに生まれる。本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナル。1719年、父に伴い、オペラの舞台デザインの仕事のためローマに赴き、景観画家の先達と知り合ったと言われる。出身地ヴェネツィアの都市景観を、壮麗かつ緻密に描いた景観画「ヴェドゥータ」で名を馳せる。1746年からはパトロンのいる英国に長期滞在した。1768年、ヴェネツィアで没する。享年71歳。

    カナレットとヴィゼンティーニの肖像 肖像部分原画:ジョヴァンニ・バッティスタ・ピアツェッタ
    画面構成・彫版:アントニオ・ヴィゼンティーニ
    《カナレットとヴィゼンティーニの肖像》(部分)
    1735年 エッチング、紙 26.6cm×41.6cm 個人蔵



    Chapter1
    カナレット以前のヴェネツィア Venice before Canaletto

    ヴェネツィアのイメージを、カナレット以前に描かれた作品を通して辿ります。
    ヴェネツィアにおける都市を描く伝統は、15世紀にまで遡ります。遠近法の成立が都市景観に対する関心を高めたことで、「鳥瞰図」や「物語絵」として、都市のイメージが客観的に再現されるようになりました。その後16世紀末から17世紀にかけて北方からやってきた画家たちの描くラグーナ(潟)の景観が、後のヴェドゥータの発展へと繋がっていきます。
    一方、18世紀、時代を代表する画家として国際的に活躍していたのが、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロでした。彼の作品を通じて、カナレットが活躍した18世紀のヴェネツィアの文化を紹介します。


    ネーデルラントの画家《ラグーナから見たヴェネツィア全景》 ネーデルラントの画家《ラグーナから見たヴェネツィア全景》
    1580–1600年頃 油彩/カンヴァス 66.0×193.0cm
    クライスト・チャーチ絵画館、オックスフォード
    By permission of the Governing Body of Christ Church, Oxford

    ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ《アントニウスとクレオパトラの出会い》 ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ《アントニウスとクレオパトラの出会い》
    1747年頃 油彩/カンヴァス 66.8×38.4cm
    スコットランド国立美術館
    © National Galleries of Scotland

    ヴェネツィアの裕福な貴族ラビア家の邸宅パラッツォ・ラビアの大広間装飾画のモデッロ(油絵下絵)で古代ローマの歴史の一場面が描かれています。白いドレスに身を包んだクレオパトラの手に接吻するのは、赤いマントを羽織った甲冑姿のアントニウスです。完成作の壁画はティエポロの代表作。



    Chapter2
    カナレットのヴェドゥータ Canaletto’s Vedute

    カナレットがヴェドゥータを描き始めたのは、1719年頃とされています。光と影の効果を追求した初期作品からは徐々に変化し、1730年には、澄み渡る空や輝く水の波紋の表現、定規を用いて堅固さを強調した建物の描写など、カナレットの定型的な表現が定着していきました。
    ヴェドゥータ本来の主役ではない人物描写もまた、カナレットの特徴です。様々な仕草をした人々の姿が整然とした街の景観に動きを与えると同時に、観る者を飽きさせない魅力の一つとなっています。
    カナレットのヴェドゥータは、目に見える景観をそのまま再現しているわけではありません。ありえない建物の組み合わせや、景観を描く視点の高さを工夫することで、人々が「見たいと思っている風景」を画面にとどめることに成功しました。


    カナレット《モーロ河岸、聖テオドルスの柱を右に西を望む》 【京都会場から出品】
    カナレット《モーロ河岸、聖テオドルスの柱を右に西を望む》
    1738年頃 油彩/カンヴァス 110.5×185.5cm
    スフォルツァ城絵画館、ミラノ
    Pinacoteca del Castello Sforzesco-© Comune di Milano / foto Daniele De Lonti 2024

    ヴェネツィアにおける政治の中心地であり、海からこの地を訪れる旅人の玄関口となる、パラッツォ・ドゥカーレ(元首公邸)付近が描かれています。右側にはサン・マルコ小広場への入り口にある2本の柱のうち、西側に立つ聖テオドルスの柱があり、カナル・グランデ(大運河)の対岸にはサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂とドガーナ(税関)が見えます。
    ただ実際は、パラッツォ・ドゥカーレ前の広場には本作の視点を確保できるような高さの建物はありません。まるでドローンを用いたような視点であるにもかかわらず、あくまで「自然」であるところに、カナレットの描写のマジックが遺憾無く発揮されています。



    カナレット《カナル・グランデのレガッタ》 カナレット《カナル・グランデのレガッタ》
    1730–1739年頃 油彩/カンヴァス 149.8×218.4cm
    ボウズ美術館、ダラム
    The Bowes Museum, Barnard Castle, Co. Durham,England

    ヴェネツィアの華やかな祭りの中でも一層エキサイティングなのが、レガッタです。カナル・グランデ(大運河)で行われるボートレースで、時には賓客を歓迎するためにも開催されました。華やかに彩られた舟や、漕ぎ手が身につけるそれぞれのユニフォームが祭りの雰囲気を盛り上げます。建物の窓や屋根にも、祭りを見物するたくさんの人々の姿を見ることができます。



    カナレット《昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ》 カナレット《昇天祭、モーロ河岸に戻るブチントーロ》
    1738–1742年頃 油彩/カンヴァス 106.5×106.5cm
    レスター伯爵およびホウカム・エステート管理委員会、ノーフォーク
    The Earl of Leicester and the Trustees of the Holkham Estate

    数多いヴェネツィアの祝祭の中でも特に重要なのが、「海とヴェネツィアの結婚式」が行われる、キリスト昇天祭です。ブチントーロと呼ばれる御座船でアドリア海に漕ぎ出したドージェ(元首)が、「海よ、汝と結婚する」と唱えながら金の指輪を海に投げ入れます。
    緋色の屋根に緋色の旗を掲げているのがブチントーロで、金箔を貼り廻らした船体が輝いています。カナレットは、制作にカメラ・オブスキュラを用いていました。まるで動き出しそうな人々の描写は、この機械に映った動画から着想を得たのかもしれません。



    カナレット《ロンドン、ラネラーのロトンダ内部》 カナレット《ロンドン、ラネラーのロトンダ内部》
    1751年頃 油彩/カンヴァス 51.0×76.0cm
    コンプトン・ヴァーニー、ウォリックシャー
    © Compton Verney / Bridgeman Images

    オーストリア継承戦争でヴェネツィアの旅行者が減ったことから、仕事を求めたカナレットは、1746年に渡英します。本作は、ロンドンの遊興施設「ラネラー」の目玉であった巨大なロトンダ(円柱形建築物)を描いた作品です。直径約46メートルの室内には演奏席があり、その周囲を52のボックス席が囲みます。幼い頃のモーツァルトもここで演奏しました。
    窓や戸口から差し込む光が影をもたらし、シャンデリアが複数吊るされたロトンダの内部空間を、立体的かつダイナミックなものとして演出しています。



    カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》 カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》
    1760年 油彩/カンヴァス 58.3×101.8cm
    ダリッジ美術館、ロンドン
    Dulwich Picture Gallery, London

    本作に描かれたのも、キリスト昇天祭の日のモーロ河岸です。右側に、金箔が光り輝くブチントーロが描かれています。本作で特徴的なのは、光の反射の表現です。ブチントーロやゴンドラに散りばめられた光の粒が、船を漕ぐ人々にも降り注いています。
    最も明るい部分を点で描く方法は、晩年に近づくにつれて顕著になっていきました。そしてその色調もまた、少しずつ暗さが加わり、コントラストが強調されていきます。




    Chapter3
    カナレットの版画と素描
    Canaletto’s Etchings and Drawings –Around the Creative Process

    素描や版画、そしてカメラ・オブスキュラをキーワードに、カナレットの創造の秘密を探ります。
    写真がまだ存在しない時代において、複製を可能とする版画は、極めて価値のあるメディアでした。1735年に刊行された『ヴェネツィアのカナル・グランデの景観』は、カナレットの原画を元にアントニオ・ヴィゼンティーニが彫版した作品集で、カナレットのパトロンであるジョゼフ・スミスが企画しました。発注のための見本帖だったために、機械的で規則的な手法で制作されています。一方、カナレットが自刻した版画作品は、より自由な、独自の筆致を残しています。素描もまた、油絵にはない、より自由な画家の手の痕跡を伝えます。


    カメラ・オブスキュラ

    カメラ・オブスキュラ(Camera Obscure)とは、光学の原理を利用して外の景色を投影する装置で、今日の「カメラ」の語源となりました。投影された景色は反転していますが、そのイメージをなぞると、正確な遠近法を用いて描くことが可能となります。カナレットは、カメラ・オブスキュラを用いて制作した画家の一人でした。

    カナレットとヴィゼンティーニの肖像 《レフレックス・カメラ・オブスキュラ》
    ロンドン、ジョーンズ製 1800年頃
    東京富士美術館
    © 東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom



    カナレット《ドーロ風景》 カナレット《ドーロ風景》
    1744年以降に刊行 エッチング/紙 29.8×42.8cm
    第3ステート スコットランド国立美術館
    © National Galleries of Scotland

    カナレット《サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演》 カナレット《サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演》
    1755–1757年? ペン、インク、淡彩/紙 20.5×31.7cm
    ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ロンドン
    © Victoria and Albert Museum, London.



    Chapter4
    同時代の画家たち、後継者たち─カナレットに連なる系譜の展開
    Canaletto’s Contemporaries and Successors —The Artistic Genealogy from Canaletto

    カナレットの影響を受けた同時代の画家たちと、英国の後継者たちが制作したヴェドゥータとカプリッチョ(綺想画)をご紹介します。
    ベルナルド・ベロットやフランチェスコ・グアルディは、カナレットの影響のもと、異なるアプローチによるヴェドゥータを数多く制作しました。カナレットの甥ベロットは、後にドレスデンやワルシャワで宮廷画家としての立場を獲得します。残されたベロットのヴェドゥータは、第二次大戦後、空襲で破壊された二つの街の再建に大きく寄与することになりました。
    カナレットの約10年間に及ぶ英国滞在を通して、英国でもまた、カナレットの影響を受けた画家によるヴェドゥータが多数制作されます。それらは同時に、カナレットによるヴェドゥータの独自性を浮き彫りにするものでもあるでしょう。


    ベルナルド・ベロット《ルッカ、サン・マルティーノ広場》 ベルナルド・ベロット《ルッカ、サン・マルティーノ広場》
    1742–1746年 油彩/カンヴァス 50.8×72.0cm
    ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
    York Museums Trust (York Art Gallery). Presented by F.D.Lycett Green through The Art Fund,1955.

    トスカーナ州北西部の街ルッカのサン・マルティーノ大聖堂の広場を、破綻のない洗練された構図で描いています。ベロットは20歳のとき、ローマ旅行の途中でルッカを訪れます。ヴェネツィアに帰国した彼は、現地でのスケッチを元に本作を描きました。



    フランチェスコ・グアルディ《小さな広場と建物のあるカプリッチョ》 フランチェスコ・グアルディ《小さな広場と建物のあるカプリッチョ》
    1759年 油彩/カンヴァス 35.5×52.0cm
    東京富士美術館
    © 東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

    ウィリアム・マーロー《カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河》 ウィリアム・マーロー《カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河》
    1795年頃? 油彩/カンヴァス 129.5×104.1cm
    テート Photo: Tate

    ロンドンのセント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河を同一画面にまとめた、カプリッチョ(綺想画)です。奇想天外なアイデアを意味するカプリッチョとは、実在するものと空想上のものを自在に組み合わせて構成された架空の景観画です。作者のマーローは、異なる土地のランドマークを合体させるという大胆な発想と構成で、虚構の大空間を創造しました。




    Chapter5
    カナレットの遺産 Canaletto’s Legacy

    最後に、風景画の世紀とも言われる19世紀にヴェネツィアはどのように描かれたのか、英仏の画家たちに焦点をあわせて、その変遷を辿ります。
    カナレットが定着させたヴェネツィアの「絵になる」イメージは、多くの画家たちをも魅了します。19世紀後半の印象派の萌芽を感じさせる作品の存在に気づかされる一方で、当時のロマン主義的な潮流を背景に、ヴェネツィアの暗部を描き出す作品も登場します。それはカナレットが導いたヴェドゥータの世界とは異なる、極めて近代的なヴェネツィアのイメージでした。同時に、この都市を描きたいという憧れは、カナレットのヴェドゥータに端を発するものであることもまた確かでしょう。


    ウィリアム・エティ《溜息橋》 ウィリアム・エティ《溜息橋》
    1833–1835年 油彩/カンヴァス 80.0×50.8cm
    ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
    York Museums Trust (York Art Gallery)

    カナレットのヴェドゥータにも描かれていたパラッツォ・ドゥカーレ(元首公邸)とパラッツォ・デッレ・プリジョーニ(牢獄)、その間を繋ぐ「溜息橋」が描かれています。牢獄の戸口から、処刑された裸の囚人が、2人の男性によって運ばれています。作者のエティは、ヴェネツィアのランドマークの間で人知れず死んだ囚人に思いを馳せながら、大胆な構図のもと描きだしました。



    ウジェーヌ・ブーダン《カナル・グランデ、ヴェネツィア》 ウジェーヌ・ブーダン《カナル・グランデ、ヴェネツィア》
    1895年 油彩/カンヴァス 51.0×74.5cm
    東京富士美術館
    © 東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

    クロード・モネ《パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア》 クロード・モネ《パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア》
    1908年 油彩/カンヴァス 92.3×73.2cm
    ウェールズ国立美術館、カーディフ
    © Amgueddfa Cymru – Museum Wales

    1908年、初めてヴェネツィアを訪れたモネは、37点におよぶ油彩の連作を描きました。
    連作「ヴェネツィア」に描かれたのは、いずれもアカデミア橋以東のカナル・グランデ沿いの風景です。モネの眼差しが捉えるのは、その景観でも人々の営みでもなく、水面に輝く光や街の空気、曖昧な輪郭線をもつ建築物とゴンドラであり、その周囲は大胆にトリミングされています。平面的な絵画世界全体に、ヴェネツィアの水と光、大気が大きく広がっていきます。



    関連イベント

    ❶ 講演会「ヴェネツィアの都市空間とその描き方の変遷」

    日時
    2月15日(土) 10:30~12:00
    会場
    3階フィルムシアター
    講師
    陣内秀信氏(法政大学名誉教授)
    定員
    150名
    参加費
    無料 (ただし本展入場券〈半券可〉の提示が必要)
    申込方法
    下記よりお申し込みください。
    または、往復はがきに住所・氏名(返信面にも)・電話番号・希望イベント名を記入し、京都文化博物館「カナレット展」係へお送りください。
    ※先着順。定員に達し次第、受付を終了。
    ※参加者1名ごとにお申込みください。
    ※当日、保育ルームあり。詳細は決定次第、お知らせします。
    お申込みはこちら

    ❷ ワークショップ「カメラ・オブスキュラをつくろう」

    カナレットが絵画制作に用いた道具、カメラ・オブスキュラを制作するワークショップです。
    カメラの原型となった、この光学装置をつかって不思議な視覚体験を楽しみましょう!

    日時
    3月22日(土) 14:00~16:00
    会場
    3階 やすらぎコーナー(カナレット展 会場内)
    講師
    植田憲司氏(京都経済短期大学専任講師)
    定員
    15名
    参加費
    1,000円(税込)(その他、本展入場券<半券可>の提示が必要)
    申込方法
    下記よりお申し込みください。
    または、往復はがきに住所・氏名(返信面にも)・電話番号・希望イベント名を記入し、京都文化博物館「カナレット展」係へお送りください。
    ※先着順。定員に達し次第、受付を終了。
    ※参加者1名ごとにお申込みください。
    お申込みはこちら

    ❸ 関連映画上映 『MOLECOLE~分子~』 企画:イタリア文化会館–大阪
    (2020年/イタリア/監督:アンドレア・セグレ/71分) *日本語字幕あり

    コロナ渦、人の消えたヴェネツィアの街を舞台としたドキュメンタリー映画を上映します。

    日時
    3月15日(土)13:30~15:00
    *上映後にイタリア文化会館–大阪 館長 アンドレア・ラオス氏のアフタートーク(15分程度)があります。
    会場
    3階フィルムシアター
    定員
    150名

    ※事前申込不要、参加費無料(ただし、本展入場券<半券可>が必要)


    MOLECOLE 〜分子〜(2020年 イタリア)

    「ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-」(2011)のアンドレア・セグレ監督が届けるドキュメンタリー
    空洞化していくヴェネツィア中心部での暮らしのはかなさ、その素晴らしさと怖さ

    MOLECOLE

    ローマ在住の映画監督アンドレア・セグレは、ロックダウンにより2020年2月から4月にかけて彼の父親の故郷であるヴェネツィアに閉じ込められる。
    当時、セグレは、ヴェネツィアを傷つける問題、すなわちツーリズムと「アックア・アルタ」(異常潮位の高潮)をテーマにした演劇と映画用の二つのプロジェクトに取り組んでいたが、その撮影中に、彼の目の前で、新型コロナウイルスによりヴェネツィアの街がフリーズし、空っぽになっていった。そして、ヴェネツィアはヴェネツィア本来の姿、本質や歴史を取り戻し、セグレ自身にも同じことが起こった。



    アンドレア・セグレアンドレア・セグレ

    映画・ドキュメンタリー監督。1976年、ヴェネツィア県ドーロ町生まれ。
    これまでに3本の作品がヴェツィア国際映画祭で紹介される。1本目は趙濤主演の「ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-」(2011)で、同映画祭のFEDIC賞を受賞。続いて「初雪」(2013)が第70回のオリゾンティ部門に出品され、さらに「THE ORDER OF THINGS」(2017)が第74回のアウト・オブ・コンペティション部門に選出された。


    ❹ギャラリートーク

    日時
    2月21日(金)、3月7日(金) 各日14:00~(30分程度)
    会場
    4・3階展示室
    ※事前申込不要、参加費無料(ただし、当日の入場者に限る)



    本展は,政府による美術品補償制度の適用を受けています。
    This exhibition is covered by the Japanese Act on the Indemnification of Damage to Works of Art in Exhibitions (Act No.17 of 2011) 文化庁


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