祇園祭 ―
2019.8.10(土) 〜 10.20(日)
京都市下京区四条通烏丸東入ルの長刀鉾町から出立する長刀鉾は、祇園祭前祭の山鉾巡行で常に先頭を行く鉾です。山鉾の中では唯一生き稚児を乗せて巡行し、途中、四条通麩屋町に張られた注連縄を稚児が刀で切り開く姿は、祇園祭を象徴する光景のひとつとして広く知られています。
長刀鉾は、祇園祭に参加する山鉾の古式の目安とされる応仁の乱よりも以前からその名があり、くじ取り式が始まった明応9年(1500)から現在に至るまで、常に巡行一番を勤めてきた由緒ある鉾です。歴史と伝統に裏打ちされた長刀鉾には、数多くの貴重な品々が伝来しています。
長刀鉾の歴史は、まさに祇園祭の歴史そのものです。今回の展示では長刀鉾に伝わる華麗な美術工芸品を取り揃えました。魅力あふれる長刀鉾の名宝優品をご覧いただき、奥深い祇園祭の世界をご堪能いただければ幸いです。
祇園祭前祭巡行の先頭を行く長刀鉾には、その権威に相応しい数々の名宝優品が伝来しています。鉾の側面を飾る胴懸には「梅樹の図 牡丹唐草アラビア文字額絨毯」「玉取り獅子の図 斜め格子額絨毯」と「十華の図 牡丹唐草アラビア文字額絨毯」「玉取り獅子の図 アラビア文字額絨毯」のいずれも大陸伝来の2枚ずつの幕がかけられ、その上には「二番水引 紺羅紗地唐草四神八珍果図刺繍 三番水引 蜀江雲龍文様繻珍」が彩りを添えます。そして欄縁には黒漆塗地に菱川清春が下絵を手掛けた「三十六禽之図」の鍍金金具がつき豪華さを演出します。また長刀鉾の天井囲板には、紀廣成の下絵による「星板鍍金二十八宿図」が輝き、前後のけらば板には、松村景文が描いた「鶴図」と「孔雀図」がはめられます。そのほか、屋根の破風蟇股には木彫の人形が飾られますが、そのうちの一体は伝説の刀工である三條小鍛冶宗近が長刀を鍛えている姿を写したもので、長刀鉾の象徴ともいえる長刀の鉾頭に関する歴史物語を彷彿とさせます。
番号 | 資料名 | 員数 | 時代 | 指定等 | 展示期間 |
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1 | 旧胴懸 梅枝に小鳥の図毛綴 | 1枚 | 16世紀前期 | 前期 | |
2 | 胴懸 梅樹の図 牡丹唐草アラビア文字額絨毯 | 1枚 | 17世紀初頭 | 前期 | |
3 | 胴懸 十華の図 牡丹唐草アラビア文字額絨毯 | 1枚 | 17世紀初頭 | 前期 | |
4 | 胴懸 玉取り獅子の図 アラビア文字額絨毯 | 1枚 | 16世紀初頭 | 前期 | |
5 | 胴懸 玉取り獅子の図 斜め格子額絨毯 | 1枚 | 16世紀初頭 | 前期 | |
6 | 二番水引 紺羅紗地唐草四神八珍果図刺繍 三番水引 蜀江雲龍文様繻珍 | 4枚 | 文政4年(1821) 江戸時代 | 後期 | |
7 | 後懸 中東連花葉文様 ラホール絨毯 | 1枚 | 17世紀中頃 | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
8 | 稚児本衣裳 紅地雲取龍鳳凰金襴振袖 天冠 羯鼓・撥 中啓 浅沓 懸守 太刀(附・刀立て) | 一式 | 重要有形民俗文化財 | 前期 | |
9 | 長刀 銘 和泉守藤原来金道 | 1振 | 延宝3年(1675) | 前期 | |
10 | 鉾頭 長刀(プラチナ箔 模造刀) | 1振 | 平成23年(2011) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
11 | 棟先飾 金箔押虎魚(鯱) | 2体 | 文政11年(1828) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
12 | 欄縁 黒漆塗「三十六禽之図」鍍金金具付 菱川清春下絵 | 4本 | 天保7年(1836) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
13 | 見送裾部飾金具 鉄線に虫尽し文様鍍金金具 | 9点 | 天保7年(1836) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
14 | 角飾金具(上段)雲文様肉厚彫鍍金金具 | 4点 | 文政4年(1821) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
15 | 角飾金具(2段目)雲鶴文様鍍金金具 | 4点 | 文政4年(1821) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
16 | 角飾金具(3段目)岩に霊芝文様鍍金金具 | 4点 | 文政4年(1821) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
17 | 角飾金具(4段目)波に鶺鴒文様鍍金金具 | 4点 | 文政4年(1821) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
18 | 天井囲板 星板鍍金二十八宿図 紀廣成下絵 | 4枚 | 文政11年(1828) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
19 | けらば板 鶴図(前)/孔雀図(後)松村景文筆 | 4枚 | 文政12年(1829) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
20 | 天王人形 和泉小次郎親衡像 | 1体 | 昭和61年(1986) 復元新調 | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
21 | 破風蟇股木彫舞楽振鉾(厭舞)像 | 2体 | 文政12年(1829) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
22 | 破風蟇股木彫三條小鍛冶宗近長刀を鍛えるの像 | 1体 | 文政12年(1829) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
23 | 掛軸「神速素盞鳴尊」 | 1幅 | 慶応4年(1868) | 前期 | |
24 | 掛軸「祇園牛頭天皇」 | 1幅 | 江戸時代後期 | 後期 |