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    Title

    京の端午の節句と尚武

    Date

    2021.4.10(土) 〜 5.30(日)

    会場: 2階総合展示室

    緊急事態宣言延長をうけ閉幕。


     毎年5月5日は「こどもの日」として親しまれています。この日は「端午の節句」とも呼ばれ、男の子の健やかな成長を願って五月人形が飾られ、粽や柏餅を食べる習慣が広く根付いていますが、実は端午の節句には様々な願いが込められてきたのです。
     菖蒲の葉を屋根に葺いたり、風呂の湯船に浮かべて入浴したりする習慣は、邪気を祓うまじないとして、京都では今も時折行われています。またこの日に上賀茂神社で行われる競馬(くらべうま)は、端午の節句の行事として平安時代からの五穀豊穣祈願の伝統を受け継いでいます。そのほかに長寿を願って飾られる薬玉など、端午の節句には人びとの多彩な祈願が寄せられてきたのです。
     今回の展示では、端午の節句にまつわる習俗や文化を京都に伝わるものを中心に紹介してゆきます。勇壮な節句飾りのほか、薬玉や菖蒲兜など邪気を祓う祈りが込められた品々、そして端午の節句を題材とした絵画資料などを公開します。身近な行事の奥に秘められた歴史と文化の魅力を、どうぞご堪能下さい。

    伝・田中訥言「飾甲冑図」(江戸時代後期)
    伝・田中訥言「飾甲冑図」(江戸時代後期)

    基本情報

    会期
    2021年4月10日(土)〜5月30日(日)
    休館日
    毎週月曜日(祝日の場合は翌日休館)、但し5月6日(木)は臨時開館
    会場
    京都文化博物館 2階総合展示室「京のまつり」
    開館時間
    午前10時〜午後7時30分(入場は午後7時まで)
    入場料
    一般500円(400円)、大学生400円(320円)、高校生以下無料
    *( )内は20名以上の団体料金
    *上記料金で、総合展示と3階フィルムシアターがご覧いただけます
     (催事により有料の場合があります)
    主催
    京都府、京都文化博物館

    「端午の節句」とは

    「菖蒲兜」(1989 年)
    「菖蒲兜」(1989 年)

     そもそも端午とは「月のはじめの午の日」を指していました。それが「午」と「五」の字の音が似ていることから、いつの間にか5月5日にゆかりの言葉となったのだといいます。
     端午の日に邪気を祓う習慣は奈良時代には中国から日本に伝わっていたとされます。この時期は田植えの前にあたることや、梅雨を迎え天候が不順になりやすい季節でもある事から、様々な祈願やまじないが行われるようになってゆきました。その後1月1日・3月3日・5月5日・7月7日・9月9日のいずれも奇数の月に日が重なる日が五節句と定められた事から、端午の節句は広く人びとに受け入れられていったといいます。

    人見淇堂「端午飾図」(江戸末~明治時代)
    人見淇堂「端午飾図」(江戸末~明治時代)
    鶴澤探山「五節句図」より「端午 印地打ち」(1724 年)
    鶴澤探山「五節句図」より「端午 印地打ち」
    (1724 年)

    薬玉と菖蒲葺

     端午の節句には邪気を祓うために様々なおまじないが行われましたが、その呪具となったのが菖蒲でした。この時期の菖蒲は生命力に溢れ、またその葉は刀にも見立てられる事から、これを屋根に葺いて魔を寄せ付けないようにする菖蒲葺の風習が、古くから行われてきました。今でも菖蒲は端午の節句の飾りとして随所にその姿を見せます。
     そのほか端午の節句の飾りとして古来宮中に飾られてきたものに薬玉があります。薬玉は邪気を祓い長寿を授けるお守りとして、人びとに重宝されてきたのです。

    月岡雪鼎「 薬玉と女官」(江戸時代中期)
    月岡雪鼎「 薬玉と女官」(江戸時代中期)
    采鳳「菖蒲に蓬図」(江戸時代)
    采鳳「菖蒲に蓬図」(江戸時代)
    『貞丈雑記』より「薬玉図」(1846 年)
    『貞丈雑記』より「薬玉図」(1846 年)

    節句飾り

     端午の節句に武者人形を飾るのは今も馴染みの深い光景です。端午の節句の呪具として用いられてきた菖蒲の葉は、これが刀の形に似ている事から、子どもたちはこれを腰に差して印地打ちなどの合戦遊びに興じました。また菖蒲は武芸を尊ぶ「尚武」や「勝負」という言葉と発音が同じである事から武士の間で珍重され、その思いはやがて民間へと浸透してゆきました。貝原益軒の甥の好古が貞享5年(元禄元年・1688)に著した『日本歳時記』には、端午の節句に町家の屋根に菖蒲を葺き、幟や武者人形を飾る様子が描かれています。

    「大将人形《八幡太郎と従者》」(1826 年)
    「大将人形《八幡太郎と従者》」(1826 年)
     「五月人形《神功皇后と武内宿禰》」(江戸時代後期)
     「五月人形《神功皇后と武内宿禰》」(江戸時代後期)
    『日本歳時記』巻4より「端午飾図」(1688 年)
    『日本歳時記』巻4より「端午飾図」(1688 年)

    賀茂の競馬

     毎年5月5日に賀茂別雷神社(上賀茂神社)の境内で催される「競馬(くらべうま)」は、平安時代に宮中で行われていた儀礼の伝統を受け継ぐ行事です。騎手を乗せた二頭の馬が馬出しの木から勝負の木までの直線約150メートルを駆け抜ける様子は、端午の節句に相応しい勇壮なものです。文化3年(1806)に浮世絵師の速水恒章(春暁斎)が著した『諸国図会年中行事大成』には、多くの見物人で賑わう様子が描かれています。

    『諸国図絵年中行事大成』巻5より「賀茂競馬図」(1806 年)
    『諸国図会年中行事大成』巻5より「賀茂競馬図」(1806 年)
    猪飼嘯谷「賀茂競馬図」
(1923 年)
    猪飼嘯谷「賀茂競馬図」
    (1923 年)

    主な出品資料

    番号 資料・作品名 作者等 員数 時代
    1 「五節句図」より「端午 印地打ち」 鶴澤探山 1幅 享保9年(1724)
    2 「薬玉と女官」 月岡雪鼎 1幅 江戸時代中期
    3 「菖蒲に蓬図」 采鳳 1幅 江戸時代
    4 「檜兜図」 村瀬双石 1幅 江戸時代後期
    5 「飾甲冑図」 伝・田中訥言 1幅 江戸時代後期
    6 「加藤清正像」 紀広成 1幅 江戸時代後期
    7 「端午飾図」 人見淇堂 1幅 江戸末〜明治時代
    8 「賀茂競馬図」(大橋家コレクション) 猪飼嘯谷 1幅 大正12年(1923)
    9 『日本歳時記』巻4より「端午飾図」 貝原好古 1冊 貞享5年(1688)刊
    10 『諸国図会年中行事大成』巻5より「賀茂競馬図」「市井葺菖蒲図」 速水恒章 2冊 文化3年(1806)刊
    11 『貞丈雑記』より「薬玉図」 伊勢貞丈 1冊 弘化3年(1846)刊
    12 五月人形(秀吉と従者) 一式 文政6年(1823)
    13 大将人形(八幡太郎と従者) 一式 文政9年(1826)
    14 五月人形(神功皇后と武内宿禰) 一式 江戸時代後期
    15 菖蒲兜 1台 平成元年(1989)
    16 薬玉「真」 1点 平成8年(1996)
    17 薬玉「行」 1点 平成11年(1999)
    18 薬玉「草」 1点 平成11年(1999)

    *出品資料は全て京都府の所蔵品です(京都府立京都学・歴彩館蔵/京都文化博物館管理)

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