祇園祭-
2015.8.29(土) 〜 11.8(日)
祇園祭の山鉾は様々な来歴を持つ懸装品で飾られる事がその魅力のひとつです。なかでも西洋からもたらされたタペストリーを懸装品としたしつらえは、その美麗な絵姿や細密な技巧と共に、アジアとヨーロッパを結ぶ地球規模の長大な交易路を経て都へもたらされたという壮大なロマンがあり、見る者は感動と興奮を覚えずにはおれません。鯉山は、16世紀に今のベルギーで織られたタペストリーを、懸装品として仕立て直されたものが伝来している山です。鯉山の周囲を飾るヨーロッパ製の懸装品には、京の町の奥の深さの一端が垣間見え、祇園祭の魅力のひとつとなっています(16世紀のタペストリーは後期に展示致します)。
また鯉山は、鯉が激流の滝を昇って昇天し龍となる「登竜門」の逸話を元にした山で、波間を泳ぐ躍動感あふれる姿の巨大な鯉の木彫が搭載されています。鯉の姿には人びとの立身出世への願いが込められており、その意匠が具現化されています。そのほかにも鯉山には、歴史と伝統を感じさせる懸装品や装飾が数多く伝来しています。
鯉山の魅力のひとつに、中世ヨーロッパからもたらされたタペストリーを仕立て直した懸装品があります。これはホメロスによる古代ギリシャの長編叙事詩『イーリアス』から、トロイの王プリアモスとその妃のヘカベが、ギリシャの神であるアポロンの像を崇拝する姿を描いたもので、鯉山では、このタペストリーを9つに裁断し、それぞれ見送と2枚の胴懸、そしてその上部を飾る2枚の水引とし、また残る4つの部分をひとつにした前懸にそれぞれ仕立て直しているのです。
前懸中央の裾の部分には、反転した「B」の文字が2か所にあしらわれているのが認められますが、これはこのタペストリーが製作された場所である「ブラバン・ブリュセル」(現在のベルギー・ブリュッセル)をあらわすイニシャルで、同地は16世紀のヨーロッパにおける毛綴織の一大生産地でした。現在では極めて希少なこのタペストリーは、遠く日本の京都で祇園祭の懸装品として大切に伝えられてきたのです。