祇園祭 ―函谷鉾の名宝―
2019.4.6(土) 〜 6.16(日)
函谷鉾は、京都市下京区四条通烏丸西入の函谷鉾町から山鉾巡行に参加する鉾です。鉾の名前は、中国の斉の国(紀元前300~400年)の宰相・孟嘗君が函谷関を突破し難を逃れたという故事に由来します。
函谷鉾は、天明8年(1788)の大火で被災し、その後50年間巡行に参加できませんでしたが、天保10年(1839)に復活を遂げます。その時、復興した函谷鉾は生き稚児の代わりに稚児人形「嘉多丸」を戴いて巡行をしたのです。これは長い祇園祭の歴史のなかで初めての事でした。
また函谷鉾には、16世紀中期のベルギーで織られ重要文化財となっている前掛飾毛綴(『旧約聖書』「イサクに水を供するリベカ」より)をはじめ、17世紀に作られた「中東連花葉文様」ラホール絨毯の前掛や、中国大陸や朝鮮半島で織られた絨毯などを継いで仕立てた胴掛など、舶来の貴重な懸装品が多数。
函谷鉾は、多くの苦難や変化を乗り越えて今日まで受け継がれてきました。今回の展覧会を通して、函谷鉾をはじめとする祇園祭の魅力をどうぞご堪能下さい。
天明8年(1788)に京都を襲った大火で、函谷鉾は部材などの大部分を焼失し、町内も疲弊してしまいました。しかし、天保9年(1838)に御公儀から、来年の祇園祭には必ず鉾を出すようにとの指示を受け、函谷鉾再建への取り組みが始まります。寄町など周辺にも資金協力を仰ぎ、まず白木の鉾が復興しましたが、稚児を戴く算段までは整いませんでした。
この実情を公儀に届けたところ、稚児を人形にしても良いとの返答を受け、函谷鉾町では稚児人形の制作に着手します。まず、かつて町内に住んでいた仏師の七条左京の縁をたどって制作を依頼し、また人形のモデルを探すべく、五摂家のひとつ一條家へ顛末を言上、これを聞いた一條家の当主忠香卿から「我が長男の姿を写するに苦しからず」と御意を賜り、長男の一條実良卿の御姿を写し、さらに忠香卿からは稚児人形へ「嘉多丸」との御命名を賜りました。
こうして天保10年、祇園祭史上初となる稚児人形嘉多丸を乗せた函谷鉾は、実に半世紀ぶりに山鉾巡行への復帰を果たしたのです。
資料名 | 員数 | 指定等 | 展示期間 | |
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前掛 飾毛綴(『旧約聖書』「イサクに水を供するリベカ」より) | 1枚 | 16世紀中頃 | 重要文化財 | 前期 |
前掛 飾毛綴(『旧約聖書』「イサクに水を供するリベカ」より) | 1枚 | 平成18年(2006)復元新調 | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
前掛 中東連花葉文様ラホール絨毯 | 1枚 | 17世紀前半 | 後期 | |
見送 金剛界礼懺文 軸装 | 1枚 | 江戸時代後期 | 前期 | |
胴掛(南・三枚の右)玉取親子獅子図朝鮮毛綴 | 1枚 | 17世紀前半 | 後期 | |
胴掛(南・三枚の中)蓬莱山四蝶図朝鮮毛綴 | 1枚 | 19世紀初頭 | 後期 | |
胴掛(南・三枚の左)鳳凰と虎と鵲に牡丹の図朝鮮毛綴 | 1枚 | 17世紀前半 | 後期 | |
胴掛(北・三枚の右)玉取獅子図 アラビア文字額 中国近辺絨毯 | 1枚 | 17世紀初頭 | 前期 | |
胴掛(北・三枚の中)中東連花葉文様インド絨毯 | 1枚 | 18世紀前半 | 前期 | |
胴掛(北・三枚の左)虎と梅樹図 斜め格子額 中国近辺絨毯 | 1枚 | 17世紀初頭 | 前期 | |
後掛 八ツ星メダリオン草花文様 インド絨毯 | 1枚 | 17世紀後半 | 後期 | |
稚児人形「嘉多丸」 仏師七条左京康朝作 | 1体 | 天保10年(1839) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
稚児人形天冠 | 1台 | 大正7年(1918) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
稚児人形装束 狩衣・小袖・差貫 | 一式 | 平成19年(2007) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
稚児人形持物 羯鼓・中啓 | 一揃 | 天保10年(1839) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
稚児人形天冠 (西陣織物館蔵) | 1台 | 天保10年(1839) | 後期 | |
稚児人形衣裳 狩衣 (西陣織物館蔵) | 1具 | 天保10年(1839) | 後期 | |
稚児人形衣裳 狩衣 (西陣織物館蔵) | 1具 | 大正7年(1918) | 後期 | |
軒裏絵「鶏鴉図」 今尾景年筆 | 4枚 | 明治33年(1900) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
関の雄雌鶏 | 2点 | 天保10年(1839) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
破風板飾 八双金物金銅透彫鳳凰 | 6点 | 明治17〜18年(1884〜85) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
破風飾金具 金色塗菊花丸彫 拝懸魚の鰭 | 2点 | 江戸時代後期 | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
獅子口の鰭 金箔置巻雲形彫の鰭 | 2点 | 明治18年(1885) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
破風 金色塗三ツ花懸魚 | 1点 | 嘉永元年(1848) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
鉾頭 月形 白銅銀鍍金 | 1点 | 天保10年(1839) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
妻板飾 「林和靖」「鶴飼童子」「波に亀」「牡丹」 | 4点 | 嘉永2年(1849) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
房掛 大形源氏蝶 極彩色金箔置 木彫 | 4点 | 文久元年(1861) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
雲麒麟座花 宣徳香爐 | 1台 | 明治26年(1893) | 前期 | |
宣徳花瓶 金菊花 | 1対 | 昭和32年(1957) | 前期 | |
掛軸「祇園牛頭天王」一條忠香筆 | 1点 | 天保9年(1838) | 通期 | |
「風光帖」 | 1冊 | 文化2年(1805) | 後期 | |
「町中一統連印申堅書」 | 1通 | 天保9年(1838) | 前期 | |
「口上書」 | 1通 | 天保10年(1839) | 前期 | |
「木偶御稚児之由来」 | 1通 | 弘化3年(1846) | 後期 |
*出品する資料は、No.16、17、18を除き、全て公益財団法人函谷鉾保存会の所蔵品です。
*出品する資料のうち、No.16、17、18は一般財団法人西陣織物館の所蔵品です。
*前期展示 2019年4月6日(土)〜5月12日(日)/後期展示 2019年5月15日(水)〜6月16日(日)
*都合により展示資料を変更する場合があります。