祇園祭-白楽天山の名宝-
2017.8.5(土) 〜 10.15(日)
白楽天山の意匠は、唐の詩人白楽天が道林禅師に仏法の大意を問う場面をあらわしています。高名な詩人と禅師との問答の様子は、深い洞察と経験に裏打ちされた人の素晴らしさを感得させ、見る者に学問を志す心持ちを誘います。
白楽天山の意匠の元となっている白楽天(772—846)は、本名を白居易といい、中国の唐代の高名な詩人でした。杭州太守であった白楽天が西湖の北の山に赴き、老松上に住む道林禅師を訪れて「仏法の大意如何に」と問うたところ、道林禅師は「諸悪莫作 衆善奉行」(悪い事をせず、善い事を行なえ)と答えます。これを聞いた白楽天は「そんなことは三歳の子どもでも知っている」と言うと、道林禅師は「左様、しかし八十歳の老翁でも行いがたいことだ」と返し、白楽天は道林の徳に感服したといいます。道林禅師は鳥窠道林(741—824)という唐代に実在した禅僧です。白楽天山では、白楽天と道林禅師の問答とそこで交わされた深い洞察を題材としているのです。
白楽天山を飾る装飾品には、16世紀に作られたゴブラン織の「トロイヤから脱出するアイネリアス」を中央にして、左右には波濤飛龍文刺繍裂を継ぎ合わせた前懸をはじめ、見送には山鹿清華作の「北京万寿山図」の綴織が用いられています。また胴懸には、左に昭和53年(1978)にフランスから輸入した17世紀のフランドル地方製のゴブラン織「農民の食事」を、右には18世紀ベルギー製のタペストリー「女狩人」が用いられるなど、新しさと伝統が融合した美しい姿が山鉾巡行を彩ります。
今回の展覧会では、こうした白楽天山が有する貴重な品々を公開させていただきます。この展覧会を通じて、白楽天山の素晴らしさご堪能いただきますと共に、祇園祭の歴史や文化の奥深さの一端に触れていただければ幸いです。