祇園祭―八幡山の名宝―
2018.10.27(土) 〜 2019.1.14(月・祝)
八幡山は、京都市中京区新町通三条下ルの三条町から祇園祭の山鉾巡行に参加する山です。八幡山は町内で祀られてきた八幡社を搭載する山で、巡行の際には朱鳥居に黄金の社殿が美しく映え、沿道の人びとを魅了してきました。
八幡山には、波濤に飛龍文様の刺繍を施した中国伝来の見送や、嬉遊婦女図に日輪鳳凰文額のついた見送、そして3枚の昇龍文様の綴織をつないだ胴懸など、近世後期の優れた懸装品が多く伝え残されています。また飾金具にも八木奇峰の下絵による霊芝文様の見送裾金具や笹文様の轅先金具など、目を引く品物が数多く伝来しているのが特徴です。
八幡山の所蔵品を通じて、その魅力を堪能していただきますと共に、祇園祭のもつ歴史や文化の奥深さに触れていただければ幸いです。
祇園祭の山鉾巡行が行なわれる前夜を宵山といいます。前祭では7月14日から16日までの3日間が宵山で、後祭では21日から23日までが宵山です。宵山では、山鉾町やその周辺の家々で家宝の屏風などを家のミセノマ(店の間)や座敷に飾り、道行く人の眼を楽しませるという習慣があります。これは「屏風祭」と呼ばれており、祇園祭宵山の呼び物のひとつです。八幡山を出す三条町では、特に屏風祭が華やかに行なわれ、昔ながらの風情を楽しむことができます。
宵山に三条町で拝見できる屏風の中でもとりわけ目を引くのが「祇園祭礼図屏風」です。六曲一隻の屏風には、金雲によって巧みに画面が分けられ、上段には後祭の巡行をする山鉾が四条通りを西へと向かう様子が描かれ、下段には三条通りを東進する三基の神輿が描かれています。この屏風の作者は海北友雪(1598―1677)。桃山時代の高名な絵師、海北友松の息子です。絵師友雪の円熟期に描かれたこの屏風は、往時の祇園祭の様子を伝える資料としても貴重なものです。近年精巧な複製が製作され、その技術の素晴らしさもまた八幡山の屏風祭の見どころとなっています。
資料名 | 時代 | 指定等 | 展示期間 |
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見送 嬉遊婦女園の図 番い鳳凰額 中国綴織掛物 | 天明5年(1785) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
見送 波濤に飛龍文様中国絹紋織官服直し | 宝暦年間 (1751〜64) | 後期 | |
見送 慶壽裂 八僊図 | 元禄3年(1690) | 後期 | |
胴懸 昇龍文様綴織 三点継 | 文化元年(1804)/文化11年(1814) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
前懸 平和の鳩図綴錦 | 昭和32年(1957) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
前懸 紺羅紗地唐獅子図刺繍 | 元文5年(1740) | 前期 | |
胴懸 紺羅紗地麒麟図刺繍 | 元文5年(1740) | 前期 | |
水引 金地花鳥堂閣図刺繍 | 文化6年(1809) | 前期 | |
水引 金地鹿図刺繍 | 文化6年 (1809) | 後期 | |
八幡宮祠 | 天明年間 (1781〜89) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
木彫漆箔法相華文鳳凰文見送飾 | 天保8年(1837) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
木彫漆箔花丸文様角飾房掛 | 天保8年(1837) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
木彫漆箔松皮菱文様角飾房掛 | 天保8年(1837) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
岩文彫金角飾房掛金具 | 天保9年(1838) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
霊芝文様見送裾飾房掛金具 | 天保9年(1838) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
笹文轅先金具 | 天保9年(1838) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
雲鶴文欄縁金具 | 天保9年(1838) | 重要有形民俗文化財 | 後期 |
祇園祭礼図屏風 海北友雪筆 | 明暦年間(1655〜58) | 京都市指定文化財 | 前期 |
祇園祭礼図屏風(複製) | 平成23年(2011) | 後期 | |
文箱 2点 | 元禄17年(1704)/文政7年(1824) | 前期 | |
鳩 (新・旧) | (旧)江戸時代/(新)平成24年(2012) | 後期 | |
額「八幡山」木製漆箔 2点 | 寛文元年(1661)/天保9年(1838) | 重要有形民俗文化財 | 前期 |
矢 伝・島左近所用 | 安政4年(1857)奉納 | 前期 | |
掛軸「八幡大神」 | 前期 |