近衞家 王朝のみやび 陽明文庫の名宝14
―御堂関白記と源氏物語
2024.9.28(土) 〜 11.24(日)
京都市右京区に所在する陽明文庫は、朝廷の最高官職である摂政・関白を務めた藤原氏五摂家の一つ、近衞家の御蔵を継承した機関で、平安時代以来の歴史資料の一大宝庫です。
陽明文庫は、数多くの国宝や重要文化財を所蔵しており、なかでも、平安時代に栄華を極めた藤原道長の日記、国宝『御堂関白記』は、平安時代の政治や文化を今に伝えるものとして、並ぶもののない価値を有します。また、道長が活躍したまさにその時代、紫式部は『源氏物語』を著しますが、陽明文庫には、『源氏物語』[別本]系統の代表的な写本である重要文化財『源氏物語』(通称、陽明文庫本)をはじめ、複数の優美な写本が所蔵されています。
今回の陽明文庫の名宝展では、藤原道長と紫式部が生きた時代の遺品である国宝『御堂関白記』より、藤原道長による自筆本のみ4巻を、14回を数える本展の歴史のなかで初めて、一挙に紹介します。あわせて、鎌倉時代に書写された重要文化財『源氏物語』のほか、室町時代と江戸時代の写本を展観し、各時代の源氏物語受容の歴史をたどります。さらに、王朝時代の余韻を残す『宇治拾遺物語』に取材し、絵は狩野探幽・尚信・安信兄弟の合作、詞書は近衞家凞の手になる『宇治拾遺物語絵巻』4巻を展示し、三兄弟の絶妙な画風の違いをご覧に入れます。
本展が、平安時代より続く悠久の歴史を持つ、陽明文庫の魅力に触れていただく機会となれば幸いです。
『御堂関白記』は、藤原道長の日記です。陽明文庫には、道長の自筆本が14巻伝わっており、平安時代に写された古写本12巻とともに国宝に指定されています。
道長の女子にして一条天皇の中宮であった彰子は、寛弘5年と翌6年に敦成親王、敦良親王を出産します。道長は、多忙の合間を縫って、親王出生後の諸行事の様子を書きつけました。
陽明文庫には、『源氏物語』の写本が複数のまとまりで所蔵されます。鎌倉時代に写された写本を含む一群は、『源氏物語』[別本]系統の代表的な写本とされ、金銀の箔や砂子で装飾された表紙は実に美麗です。
また、室町後期の写本は、後柏原院や三条西実隆らによって手分けして書写されました。
陽明文庫が所蔵する『宇治拾遺物語絵巻』5巻には、計25話の説話が収められます。今回の展示では、巻第二から巻第五の4巻より、藤原道長や紫式部が生きた平安時代の京都を舞台とした説話を紹介します。
※出品資料はすべて公益財団法人陽明文庫の所蔵品です。