紫式部と『源氏物語』
2024.2.10(土) 〜 4.7(日)
紫式部の生きた時代の様相を資料によって紹介するとともに、重要文化財の『源氏物語』(青表紙本)を中心に、物語から紡ぎ出された美術品を展示します。その世界観をご堪能ください。
紫式部が著した『源氏物語』は、日本最古の物語文学として、また女流作家による本格文学作品として長く人びとに愛されてきました。その日本文化に及ぼした影響は大きく、作品そのものはもとより、描かれた物語の場面は数々の美術工芸品のモチーフとなったのです。
京都文化博物館は、その前身である平安博物館の時代から『源氏物語』をはじめとする平安文化の研究を続けており、館内には数々の資料が収められています。本展覧会では、当館のこれまでの研究成果を元に、京都府所蔵の関連資料等を加え、紫式部と『源氏物語』に関するさまざまな資料を公開します。
紫式部が活躍した平安時代中期は、朝廷内を権謀術数が渦巻く不穏な時代でした。天皇の外戚として力を振るっていた藤原氏は、一族同士の骨肉の争いを繰り広げていました。そうした中で権力を掌握した藤原道長(966−1027)は娘の彰子を入内させ、その子を皇位につけることで盤石の体制を整えてゆきます。そして中宮となった彰子に仕えたのが紫式部です。彼女は道長政権に支えられた宮廷サロンの中で、自身の才能を開花させてゆくのです。
紫式部が著した『源氏物語』は、主人公の光源氏を軸に、宮廷の内外で展開される様々な恋愛や、その周囲にうごめく謀略の数々など、波乱に富んだ物語が繰り広げられます。そして作中には、源氏の暮らしを彩る和歌などの文学をはじめとする華やかな宮廷文化の描写が見られ、後世にも高く評価されています。『源氏物語』と、その世界観から着想を得た文学や美術は、累代にわたって私たちを魅了し続けています。