近衞家 王朝のみやび 陽明文庫の名宝13
「三藐院記」 重要文化財指定記念
近衞信尹の生涯
2023.10.7(土) 〜 12.3(日)
京都市右京区に所在する陽明文庫は、朝廷の最高官職である摂政・関白を務めた藤原氏五摂家の一つ、近衞家の御蔵を継承した機関で、平安時代以来の歴史資料の一大宝庫です。
陽明文庫は数多くの国宝や重要文化財を所蔵しており、なかでも、平安時代に栄華を極めた藤原道長の自筆日記「御堂関白記」は、平安時代の政治や文化を今に伝えるものとして、並ぶもののない価値を有します。また、このたび新たに、安土桃山時代の当主である近衞信尹の日記「三藐院記」が、重要文化財に指定されました。信尹は直情奔放の性格で知られ、関白位をめぐる二条昭実との争論、豊臣秀吉の上奏による勅勘と薩摩国配流、その後の帰京と宿願の関白就任と、激動の生涯を駆け抜けた人物です。劇的な半生で培われた信尹の大胆な書は、近衞流(三藐院流)と呼ばれる一派をなしたことでも知られました。
今回の展示では、国宝「御堂関白記」とあわせて、若年期から最晩年に至るまでの信尹の手跡を展観し、大変革の時代を生きぬいた信尹の半生をたどります。本展が、長い歴史を持つ陽明文庫の魅力に触れていただく機会となれば幸いです。
寛弘5年9月、道長は中宮彰子の敦成親王(のちの後一条天皇)出産という慶事を迎えます。下って安土桃山時代、近衞信尹は、この年の御堂関白記自筆本の裏側に、南北朝時代の当主である近衞道嗣の日記を書きつけました(巻末より▼の部分まで)。
文禄3年、信尹は、後陽成天皇の勅勘という名目で薩摩国へ流罪になりました。この年の三藐院記には、薩摩までの旅日記が記されます。
信尹は、日々の日記ほか、折に触れて別記を作成しました。本品は、宿願叶って関白に就任した際の書類を書き写したもので、現物の文書と同じ色の紙を使っています。
信尹は “寛永の三筆”のひとりに数えられる能書家です。本品では、おおらかで力強い信尹の筆と絢爛豪華な下絵が見事な調和を生み出しています。
信尹50歳、世を去る3ヶ月前の和歌詠草で、その筆遣いには近衞流(三藐院流)の特徴がよく表れています。