この建物は日本銀行京都支店の新築移転のために辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計し、明治を代表する洋風建築として昭和44年に国の重要文化財に指定されました。
メインの建物である営業棟は煉瓦造、二階建、一部地下一階、スレート(粘板岩)、銅板葺です。外観は三条通に面して左右対称で、赤煉瓦に白い花崗岩を装飾的に配しています。屋根には各種の形をもつ通気塔、採光窓などを設けて変化に富んでいます。内部には旧営業室の抜き抜けの大きな空間があり、カウンターのスクリーンや壁面の装飾、天井の飾りに時代の雰囲気をよく表しています。営業棟の背後には別棟の金庫棟があり、渡廊下によってつながっています。金庫棟は、煉瓦造、1階建、桟瓦葺です。
レンガ・・・大阪で生産
花崗岩・・・京都府亀岡市の小金岐産、岡山県笠岡市の北木島産など
スレート(屋根)*・・・宮城県登米市の登米産
大理石(客溜り他)・・・岐阜県大垣市の赤坂産
床(営業室)・・・リノリウム張り(当初はドイツ製)*
*スレートとは、粘板岩を板状にはく離加工したもので、現在は人工的に作られているものに対して、天然スレートといいます。
*リノリウムとは、天然素材(亜麻仁油、石灰岩、ロジン、木粉、コルク粉、ジュート、天然色素など)から製造された建材で、日本へは東洋リノリウム社(今の東リ)の創業者である寺西福吉によって持ち込まれました。東洋リノリウム社によれば、この別館で使われているリノリウムの一枚面積はおよそ日本一であろうという話です。
大理石はカウンター下、階段室などに使われています。この大理石は岐阜県大垣市でとれたもので、この地域の大理石には化石が多く含まれています。
最もよく見られるのは、フズリナやウミユリなど。よく見れば、他にも何か見つかるかもしれません。
フズリナ・・・古生代のペルム紀を中心に世界的に栄えた有孔虫の仲間。
ウミユリ・・・名前からは植物のように思えるが、ウニやヒトデと同じ棘皮動物の仲間。今でも生きた化石として生存している。
別館は厚いレンガで覆われ、かなり頑丈に造られています。さらに入り口には重い鉄戸が設けられ、いかにも銀行らしい重厚な雰囲気をかもし出しています。 実はこの鉄戸は、内側にしか取手がありません。取手が内側にしかないということは、外から開けることができないということです。日本銀行時代は、いつも誰かが宿直をし、お客様から預かった大切なお金を守っていたのです。
営業室は天井が高く、窓から入ってくる光だけでもとても明るいのですが、よく見ると天井にも窓があるのがわかります。窓からはほんのり光が入り、まるで電灯をつけているようにも思えます。これは、ドーマー窓といわれる、屋根から自然光を取り入れるための窓によるものです。外から見える屋根の突き出した小窓がこのドーマー窓です。
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