近衞家 王朝のみやび 陽明文庫の名宝15
春をことほぐ
2026.2.14(土) 〜 4.12(日)
京都市右京区に所在する陽明文庫は、朝廷の最高官職である摂政・関白を務めた藤原氏五摂家の一つ、近衞家の御蔵を継承した機関で、平安時代以来の歴史資料の一大宝庫です。
陽明文庫は、数多くの国宝や重要文化財を所蔵しており、なかでも、平安時代に栄華を極めた藤原道長の日記、国宝『御堂関白記』は、平安時代の政治や文化を今に伝えるものとして、並ぶもののない価値を有します。また、陽明文庫には、平安時代から幕末にいたるまでの歴代関白の日記や書、歴代天皇の宸翰、国文学上の善本・孤本、美術工芸品の優品など、王朝文化を今に伝える数多くの資料が収蔵されています。
陽明文庫の名宝展15回の歴史の中で初めて、春期での開催となった本展では、陽明文庫の収蔵品から“春”にちなんだ逸品をご紹介します。藤原道長をはじめとした歴代当主は、恒例の行事や政務、祭礼などを滞りなく行うため、忙しく年始を過ごしていたことが、それぞれの日記から伺えます。歴代の天皇が主催し、題に沿った和歌が詠み合われる歌会始も、近衞家にとって重要な行事のひとつであり、春の歌会に関係する資料も本展ではひろく紹介いたします。さらに、江戸時代中期の当主である近衞家凞が書写した植物図鑑『花木真寫 春の巻』や、精巧を極めた銀細工の雛道具など、春の訪れをよろこぶにふさわしい美術品も、あわせてご覧に入れます。
本展が、平安時代より続く悠久の歴史を持つ、陽明文庫の魅力に触れていただく機会となれば幸いです。
国宝 御堂関白記 自筆本 寛弘元年上巻 藤原道長筆 寛弘元年(1004) (前期展示)
国宝 御堂関白記 古写本 寛弘八年巻 藤原師実筆 平安時代 11世紀 (後期展示)
『御堂関白記』は、藤原道長の日記です。陽明文庫には、道長の自筆本が14巻伝わっており、平安時代に写された古写本12巻とともに国宝に指定されます。
長保6年(改元して寛弘元年)2月、道長の長男である頼通が、栄誉ある春日祭の使者を務めます。道長は、日記の裏まで用いて行事の様子を書きつけました。
花木真寫 春の巻 近衞家凞筆 江戸時代 18世紀(通期展示)『花木真寫』は近衞家凞が記した植物画集であり、当時鑑賞された草花がきわめて正確に写されています。本展では、『花木真寫』3巻のうち「春の巻」を全場面展示します。
銀細工 雛道具 江戸時代 18−19世紀(通期展示)茶道具や楽器など、高貴な人々の生活を彩った器物が銀細工で表現されています。いくつかの器物には「文恭院様(徳川家斉)より拝領」の紙片が貼られ、本品の由緒を伺わせます。
重要文化財 古今和歌集 冷泉為相筆 鎌倉時代 嘉元3年(1305)(前期展示)
重要文化財 後拾遺和歌抄上 伝藤原為家筆 鎌倉時代 建長元年(1249)(後期展示)『古今和歌集』『後拾遺和歌抄』は、ともに平安時代に編まれた勅撰の歌集で、陽明文庫には鎌倉時代に遡る写本が伝えられています。いずれの歌集にも、春を題材にした明るく清らかな和歌が多く採録されました。
※出品資料はすべて公益財団法人陽明文庫の所蔵品です。