古来、私たちは様々な形で植物と関わってきました。衣食住の材料として、あるいは鑑賞用として生活を彩る植物は、洋の東西を問わず早くから人の研究対象となり、芸術のテーマとなっています。
中近世の日本は、世界中を見渡しても、恐らく最も植物に魅せられた土地の一つでしょう。奈良時代以来、様々な植物の見分け方や利用法を中国に学んだ日本は、特に江戸時代に世界中からもたらされた舶来の植物や学問に接し、独自の植物文化を大きく花開かせました。貴族・武士から庶民まであらゆる人々が参加した江戸時代の園芸熱は、当時の世界で最も独特かつ豊かな品種群を産み出しています。植物へのあくなき探求心は、絵画を中心に文化芸術にも大きな影響を与えました。自然の芸術とも言える美しく珍しい植物の数々を観察し、育てて利用することへの興味と共に、絵に記録し楽しむことへの興味が養われたのです。学者顔負けの知識を持つ画人たち、画家顔負けに絵の達者な学者たちが描く植物のイメージは実に多種多様で、植物をモチーフとする近世絵画をより豊かなものとしています。
本展示では、主に江戸時代以前の絵画や書籍を御覧頂き、植物に魅せられ続けた日本文化の一面をご紹介したいと思います。いつの世も変わらぬ人の植物への好奇心、植物を通じて表そうとした生命への愛情を感じて頂ければ幸いです。
基本情報
江戸の植物画
- 会 期:
- 2016年4月29日(祝・金)〜6月26日(日)[59日間]
前期:4月29日(祝・金)~5月29日(日)
後期:5月31日(火)~6月26日(日) - 休館日 :
- 月曜日、ただし、5月2日(月)は臨時開館
- 会 場:
- 京都文化博物館 3階総合展示室
- 開室時間:
- 10:00〜19:30(入場は19:00まで)
▲【通期】「花鳥図屏風」(個人蔵)室町時代
▲【前期】「百椿図屏風」(妙心寺麟祥院) 江戸時代前期 色紙隻
▲【通期】「百椿図巻」(京都府立総合資料館蔵 京都文化博物館管理) 寛文11年(1671) 部分
▲【通期】宇田川榕菴「植物写生」(京都府立植物園 大森文庫) 文政8年(1825)