「土曜日の早朝文化財研修講座」は、より多くの方へ伝統文化や文化財保護への関心と理解を深めていただくために開催しております。
 今年度は,当財団で初の開催場所となる「瑞厳山圓光寺」を含めて五ヶ寺にて実施致しました。参加者のアンケートを参考に少しずつ内容を改善し、各社寺の方々のご協力を得て取り組んだ結果、参加者の方よりご好評のお声を頂戴しました。
 文化財鑑賞では、各社寺の所有されている美術工芸品も惜しみなく展示していただき、普段は非公開の文化財を間近に見ることができました。さらに文化財に触れて、体に感じることができる充実した講座になりました。早朝の澄んだ空気の中で非日常の時間を過ごす贅沢な時間を実感していただけたように思います。 今年度の研修講座を全て無事に終えることができ、基金室一同、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。今後も、お客様のお声にお応えできるよう、文化財保護の普及・啓発活動に取り組んでいく所存でございます。
 残念ながら、ご参加いただけなかった皆様にはこの場を持ちまして、改めてお詫び申し上げます。また、会場をご提供いただいた各寺院様をはじめ、ご協力いただきました各団体の皆様に改めて御礼を申し上げます。

<本研修会にご協力いただきました団体>
協力/
浄土宗大本山くろ谷金戒光明寺、浄土宗総本山知恩院、
黄檗宗大本山萬福寺、臨済宗南禅寺派圓光寺、
臨済宗相国寺派大本山相国寺、
 公益財団法人京都古文化保存協会、京都の文化財を守る会、
関西学生古美術連盟、京都文化博物館友の会
後援/
京都府、京都府教育委員会、京都商工会議所、
京都文化財防災対策連絡会

研修会は以下の日程で行われました。
・第1回 7月 5日(土) 金戒光明寺 (参加人数 77名)
・第2回 7月12日(土) 知恩院   (参加人数 75名)
・第3回 7月19日(土) 萬福寺   (参加人数 71名)
・第4回 8月23日(土) 圓光寺   (参加人数 26名)
・第5回 8月30日(土) 相国寺   (参加人数 34名)
 ※前売り券は全て完売しております。
 皆様のご参加、本当にありがとうございました。

【研修会の様子】

▽第1回 金戒光明寺 7月5日(土)

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 7月の梅雨明け前とは思えないほどの清々しい朝、今年度第1回目の朝がゆ体験講座がくろ谷 金戒光明寺にて行われました。執事長の芳井秀教師より心温まるご挨拶を頂戴し、執事橋本周現師から「くろ谷 金戒光明寺の由緒について」と題し、ご講話いただきました。金戒光明寺と歴史の繋がり、歴史背景を紐解いてお話しして下さいました。参加者の方も理解が深まった様子で、うなずきながらお話に耳を傾けておられました。


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 文化財鑑賞では、特別公開期間以外は非公開の大方丈・紫雲の庭・鎧池を見学させていただきました。中でも大方丈では、かつて会津藩主松平容保公が鎮座されていた「謁見の間」を拝見し、金戒光明寺に漂う歴史の息づかいを感じることができました。他にもお寺が所有している美術工芸品も展示していただき、織田信長公の「天下布武」の朱印や虎の襖絵など、本当に貴重なものを見学させていただきました。


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 紫雲の庭では、お庭の美しさはさることながら、緑のコントラスト、生い茂る植物の香り、蝉の声、五感でお庭を楽しむことができました。また、お庭の中にある「ご縁の道」を参加者の皆さんが各々楽しみながら歩く姿が印象的でした。この道を歩き、一期一会の出会いに感謝し、忙しい毎日に追われて見えなくなっている日常にある幸せを実感されていたように見えました。


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 朝がゆでは、橋本周現師の後に続き食前食後のことばを唱え、食の有り難みを噛みしめながら、朝がゆを堪能しました。
今年度は全体的に若い方の参加者が増えたように思います。文化財保護に対する関心が年齢層を問わず幅広く広がっているように感じました。そして、学ぼうとする謙虚な姿勢が印象的でした。皆さんの文化財に対する気持ちに少しでもお役に立てられたなら幸いです。ご参加有り難うございました。


▽第2回 知恩院 7月12日(土)

 開催日前日まで台風が近畿に直撃するかと心配されましたが、当日は天候にも恵まれ、知恩院にて第2回目の講座を開催することができました。法然上人御堂(集会堂)にて布教部課長 九鬼昌司師より「総本山知恩院について」と題し、分かりやすく、楽しく説明していただきました。文化財鑑賞では、重要文化財の経蔵内で輪蔵を廻す体験をさせていただきました。この輪蔵を一回転させると一切経全巻を読誦したものと同じ功徳が得られるのだそうです。普段は非公開で、経蔵の中に入るだけでも貴重な体験なのですが、更に文化財に触れることができて、嬉しさのあまり涙する方もおられました。

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知恩院の御影堂は、平面積では日本で5番目に大きい寺院建築です。その国宝御影堂が、現在、平成の大修理を行っており、その時しか見ることができない修理現場を見学させていただきました。屋根の骨組み、瓦の重さなど、いつもは見上げることしかできないものを、普段と違った角度から見ることができました。

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前年度、知恩院に参加した方も、工事が進んでおり、また違った御影堂を見ることができました。『何度参加しても楽しい。』とリピーターが増える要素はここにあるのではないかと思います。また、このような文化財鑑賞を通して、文化財保護の大切さ、大変さを身近に感じることができ、普及啓発にも繋がることが期待できそうです。


▽第3回 萬福寺 7月19日(土)

 朝がゆ体験講座開催地の中で、唯一京都市外の宇治市に所在するお寺ですが、人気の秘密は、やはり一歩足を踏み入れると異国を訪れたような、中国明朝様式漂う萬福寺だからではないでしょうか。萬福寺の広大な敷地に建ち並ぶ天王殿、大雄宝殿、法堂と数々の文化財を見学させていただきました。天王殿には優しく微笑んだ布袋様が迎えて下さいました。大雄宝殿には、本尊の釈迦如来坐像、それを囲むように十八羅漢像が安置されており、これもまた迫力があり、参加者の皆さんの目を釘付けにしていました。

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萬福寺に参加される方は、坐禅体験を楽しみに来られる方も多かったようです。坐禅は、法堂にて行われました。法堂は天井が高く常に閉められているため、室温が少し冷やっとして心地良いくらいでした。また障子を通して入るかすかな光が心を落ち着かせてくれます。張りつめた静けさの中で坐禅を行うと自然と背筋が伸び、警策をいただくと、心身共に引き締まります。坐禅を終えた後の参加者の皆さんの清々しいお顔がとても印象的でした。


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 萬福寺での朝がゆは、行堂(ヒンタン)と呼ばれる桶の中に4~6名分のお粥が入っており、お寺の方のご指導の下、それを分け合うところから始まります。もちろん、無駄がないように残さず分け合います。この動作一つにしても、人を思いやる気持ちを忘れないこと、そして食事に感謝の念を忘れないなど、日頃忘れがちな心の在り方を教えて下さいました。


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 最後は、教学部長 中島知彦師より講話をいただきました。お寺の歴史や黄檗宗の特色まで、私たちの日常に近づけて分かりやすくお話ししていただき、終始引き締まった講座になりました。
 萬福寺には、他にもたくさんの文化財があり、この講座では紹介しきれていません。一度訪れただけでは満足できないのは一目瞭然です。何度でも足を運びたくなる、不思議な魅力のあるお寺です。この講座を通して、たくさんの方が文化財にふれる機会が増えることを期待します。


▽第4回 圓光寺 8月23日(土)

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今年度で 5 回目の開催となる朝がゆ体験講座ですが、圓光寺の住職大坪慶寛師にお願いしたところ快く開催を了承して下さり初めて圓光寺で朝がゆ体験講座を開催することができました。最近、知名度が上がっている圓光寺ですが、隠れ名所的なお寺なので場所が分からず迷われた方もおられたようです。前日から心配していた雨も止み、よいお天気に恵まれました。


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 圓光寺の一番の売りは、禅堂にて本格的な坐禅を体験できることです。最初の坐禅体験では、参加者の皆さんも緊張した面持ちでしたがゆっくりと呼吸を整えていくうちに穏やかな顔つきになっていかれ、時間が止まったようなひとときを過ごされました。小学生の方が 1人だけ参加されましたが静かに一生懸命坐禅に取り組んでくれました。 続いて書院へ場所を移して住職の大坪慶寛師から講話をしていただきました。圓光寺の歴史や住職の修業時代のお話も含めての禅宗の暮らしについて、また重要文化財「圓光寺版(伏見版)木活字」についてユーモアあふれるお話 でした。冷房の無い場所でしたが爽やかな風を感じながらのとても有意義な一時間でした。


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 講話の後は、圓光寺版(伏見版)木活字の実物を間近で見せていただきました。貴重な文化財を自分の目で確認し、後世に引き継いで いくことの意義を実感されたことと思います。さらに圓光寺様のご厚意により圓光寺版(伏見版)木活字により、印刷されたお経が十名の方に贈呈され、お受け取りになった方々はとても喜んでおられました。



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最後の朝がゆ体験も禅宗の食事作法も学び、みんなでお経を唱え、食べることへの感謝の気持ちを持つことができる時間となりました。当日は御住職一人で孤軍奮闘していただきましたが、参加者の皆さんは閉会後も時間の許す限り寺宝室の展示を鑑賞したり、美しいお庭を見学されたりし、文化財鑑賞と併せて普段と違う有意義な朝の時間を過ごしていただけたのではと思います。


▽第5回 相国寺 8月30日(土)

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 今年度最後の朝がゆ体験講座は相国寺でした。当日は、お天気に恵まれ京都市内の中心部にあるとは思えない静けさの中、講座が始まりました。最初は大書院において教学部長 矢野謙堂師より中国にも相国寺があることなど相国寺の歴史や由来、文化財に対する思いについて、丁寧にわかりやすくお話していただきました。


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 坐禅体験では江上正道師から呼吸を整え、意識を無にしていくことなどを教えていただき、参加者は真摯に自己と向き合っておられました。坐禅の後半は警策を志願される方が多く、静かな部屋に警策の音が続けて響いていました。
 今年の朝がゆは、昨年のタイムスケジュールを見直し坐禅の後に朝がゆを食べていただくようにしました。坐禅と併せ食事も修行の一環と捉えてほしいという意図から、又、空腹を満たし、ゆったりとした気持ちで文化財鑑賞を楽しんでいただきたいというお寺様のお心遣いからです。



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文化財鑑賞では、法堂と方丈を二班に分かれて見学させていただきました。普段は非公開の文化財内部に入り、矢 野謙堂師、江上正道師から丁寧なご説明をいただき、参加者は文化財への興味・関心をますます深められたことと思います。特に重要文化財の法堂では、天井に描かれている蟠龍図を仰ぎ見、手を打つと天井に反響する鳴き龍の声も聞くことができました。方丈では、北側と南側で趣が異なる庭園や襖絵、駕籠なども見学することができ、興味を持たれた方は閉会後も方丈を見ておられました。限られた時間の中での文化財鑑賞ではありましたが、参加者の皆様に少しでも身近に文化財を感じていただき、もっと興味を持っていただくきっかけになったのではないかと感じました。