祇園祭の山鉾巡行とそれを取り巻くさまざまな文化の魅力を紹介

京の歴史とともに現代まで連綿と受け継がれてきた祇園祭は、京都だけでなく日本を代表する祭礼として名高いものです。絢爛豪華な懸装品で飾られた山鉾は「動く美術館」とも称され、国内はもとより遠く東アジアや中近東、そしてヨーロッパの美術工芸の粋が集結しています。祇園祭に登場する山鉾は、国の重要有形民俗文化財に指定されているほか、「山・鉾・屋台行事」のひとつとしてユネスコの世界無形文化遺産にも登録されています。
また、祇園祭は日本の都市祭礼の典型として、町に暮らす人びととの関わりの中で様々な文化を生み出してゆきました。災厄を逃れる呪符としての効果を期待されたちまきをめぐる習俗や、山鉾巡行を控えた宵山よいやまに催される屏風祭などのおもてなしの文化は、祭りを楽しむ人びとの心が生み出した、京都祇園祭を象徴するものです。
今回の展示では、祇園祭に登場する山鉾の歴史や文化の様相に迫ると共に、屏風祭や粽の授与など祇園祭に際して行われる各行事の魅力を紹介します。そして、各山鉾の様相を細密に描いた大作「祇園祭山鉾絵図」も展示し、これを手掛けた故・西脇友一氏の画業にも迫ります。

『祇園祭山鉾絵図』より「長刀鉾」
▲『祇園祭山鉾絵図』より「長刀鉾」


長刀鉾(なぎなたほこ)
長刀鉾は、屋根の上に長く大きな長刀をつけているところから、その名前がつけられています。この長刀には、疫病を鎮める魔除けの力があるといわれています。また、長刀鉾にだけ男児が務める稚児(ちご)が乗るのもその特徴です。長刀鉾は、祇園祭の山鉾巡行では必ず先頭をゆきます。稚児が四条通に張られた注連縄を刀で切ることで、祇園祭の山鉾巡行ははじまります。

『祇園祭山鉾絵図』より「綾傘鉾」
▲『祇園祭山鉾絵図』より「綾傘鉾」


綾傘鉾(あやがさほこ)
祇園祭の山鉾巡行の中でも、棒振り踊りと稚児行列、そして祇園祭に登場する山鉾の原初形態といわれる傘鉾という特徴的な形態を披露するのが綾傘鉾。綾傘鉾は江戸時代後期に一時期曳鉾として巡行に加わっていた事がありましたが、幕末の大火でそれらの部材を焼失。その後明治12年(1879)から6年ほどの間徒歩囃子のかたちで祭に参加していましたが、明治17年以降それも途絶えてしまいます。しかし次第に復活の機運が高まり、昭和54年(1979)に現在のような姿で祇園祭の山鉾巡行に加わるようになりました。

西脇 友一(にしわきと もかず)と「祇園祭山鉾絵図」

西脇 友一

西脇友一氏は昭和7年(1932)11月5日に京都市に生まれ、昭和25年(1950)京都市立美術工芸学校工芸科図案専攻卒業後、丸物百貨店宣伝部、河北印刷株式会社図案部、表現社、株式会社電通を経て、昭和31年(1956)に西脇ビジュアルデザイン研究室を設立します。また昭和41年(1966)から大阪芸術大学で教鞭をとり、昭和48年に教授、昭和62年からはデザイン学科長を務めました。そのほか、昭和42年(1967)に京都デザイン協会の設立に携わり、昭和50年からは理事長を務め、また京都国際工芸センター理事や京阪神自治体のデザイン行政にも多く参画されました。
西脇氏が手掛けた山鉾町の鳥瞰図と31の山鉾の超精密描写により描かれた『祇園祭山鉾絵図』は、およそ10年の製作期間をかけて昭和60年(1985)に完成した大作です。ほかに『葵祭行装絵図』と『時代祭行列絵図』があり、『祇園祭山鉾絵図』とあわせ西脇氏の画業を代表する三部作となっています。


『祇園祭山鉾絵図』より「菊水鉾」
▲『祇園祭山鉾絵図』より「菊水鉾」


菊水鉾(きくすいぼこ)
菊水鉾という名前は、町内に昔からあった「菊水の井」という井戸にちなんで名付けられました。菊水鉾には、長寿の伝説がある菊慈童の姿をした稚児人形が載せられます。菊水鉾は、幕末の元治元年(1864)に禁門の変でその部材などの大半を焼失してしまいましたが、町の人びとの努力によって昭和27年(1952)に実に88年ぶりに見事復活を果たしました。復活した菊水鉾には、山鹿清華や皆川月華、三輪晁勢、小林尚珉など、昭和の名工によって装飾品が次々と調えられてゆきました。昭和時代に復活した菊水鉾は「昭和の鉾」とも称揚されています。

『祇園祭山鉾絵図』より「船鉾」
▲『祇園祭山鉾絵図』より「船鉾」


船鉾(ふねほこ)
船鉾は、船の形状をした独特の構造がその特徴となっています。船首には、船を守る伝説の獣である黄金の「鷁(げき)」の木彫が配置されます。船尾には漆黒に龍が飛ぶ姿を螺鈿細工で描いた舵が装着されます。二層部分の屋形の天井には、金地に様々な植物の模様を描いた絵があります。船体を飾る装飾品には、18世紀の中国の官僚の制服を仕立て直した幕など数々の品がそろいます。船鉾は、神功皇后の伝説を主題とした意匠で、巡行の時には神功皇后とほかに3体の神様の像が搭載されます。神功皇后の面は文安年間(1444—48)の作であると考えられています。

『祇園祭山鉾絵図』より「月鉾」
▲『祇園祭山鉾絵図』より「月鉾」


月鉾(つきほこ)
月鉾は全高約26メートル、総重量は約12tと祇園祭の山鉾の中では最大の重さがあります。月鉾という名前は、屋根の上から延びている鉾頭という長い柱の先端に三日月がついている事か名付けられたといいます。月鉾には豪華な屋根の飾りがあるのも特徴です。江戸時代の有名な画家の円山応挙の絵が描かれているほか、有名な大工の左甚五郎の作品という彫刻があります。

基本情報

祇園祭-山鉾巡行の歴史と文化-
会 期:
2017年6月20日(火)~7月30日(日)
休館日:
毎週月曜日(祝日の場合は翌日)※7月24日(月)は臨時開館します。
開室時間:
10:00~19:30(入室は19:00まで)
会 場:
2階総合展示室 京のまつり
主 催:
京都府、京都文化博物館
協 力:
公益財団法人祇園祭山鉾連合会ほか


出品リスト

資料名時代員数所蔵
菊水鉾巡行模型昭和46年(1971)一式京都府蔵
(京都文化博物館管理)
月鉾模型昭和時代1基京都府蔵
(京都文化博物館管理)
『都名所図会』安永9年(1780)6冊京都府蔵
(京都文化博物館管理)
善秋・万秋 筆 「祇園会」明治時代1幅京都府蔵
(京都文化博物館管理)
楠部 彌弌 作 「祭り」昭和49年(1974)1口京都府蔵
(京都文化博物館管理)
洛中洛外図屏風(松居家本)右隻江戸時代後期1隻個人蔵
西脇友一 画 「祇園祭山鉾町鳥瞰図」昭和60年(1985)1枚京都文化博物館
長刀鉾鉾頭模型昭和時代1台京都文化博物館

*都合により展示資料を変更する場合があります。